歯科用金属によるアレルギーの発現は、多くの症例が報告され、作用機作の検索とともに、スクリーニング法を確立することが緊急の課題となっている。そこで今回、ヒトにおける歯科用金属によるアレルギーの発現をin vitroで検査するリンパ球刺激試験を行うとともに、抗原のin vitro刺激によるリンパ球の反応をCD4^+(ヘルパーT細胞)、CD8^+(サプレッサーT細胞)の変化で調べ、in vivo反応のパッチテストやアレルギー発症経験との関係から検討し、以下の結果を得た。【1】コバルトやクロム、金、チタンのリンパ球刺激試験では、パッチテスト陰性者は低い刺激指数を示し、アレルギー発症経験者を含むパッチテスト陽性者で刺激指数が180以上の高値であった。これらの金属については、リンパ球刺激試験によるスクリーニングは有用であった。【2】しかし水銀とニッケルでは、アレルギーの発症経験やパッチテストの結果と関係なく、いずれの被験者もリンパ球刺激指数が高値であった。とくに高い刺激指数を示した水銀の長期取り扱い者では、パッチテストも陰性であったことから、免疫寛容によるリンパ球の反応でも刺激指数が高くなることを示唆した。したがって感作されやすく、また免疫寛容を起こしやすい水銀とニッケルでは、リンパ球刺激試験はin vivo反応を反映しないので、スクリーニング法として有用でないことを示した。【3】マイトージェン物質のPHA(フィトヘマグルチニン)による刺激では、CD4^+、CD8^+ともに大きな変化を示した。水銀およびコバルトのin vitro刺激では、CD4^+はアレルギー発症経験者で変化せずに非経験者で減少傾向であり、CD8^+はいずれも減少して免疫応答の可能性を示唆した。リンパ球刺激試験やCD4^+、CD8^+などの免疫応答の変化をアレルギー発現のスクリーニングに応用するには、さらなる検討が必要である。
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