研究概要 |
齲蝕予防としてのフッ化物の有効性と安全性評価には,食晶と飲料水や他のフッ化物源からの総フッ化物量を評価することが重要である。それに先立って本研究では食品中フッ化物分析を樋出ら(1992)との共同で開発したテフロン製微量拡散装置を用いて基礎的な検討を加えて評価した。評価項目は各食品試料の拡散時間とフッ化物添加回収率であり,これらに基づき拡散法によるフッ化物分析の精度管理について検討した。またこれらの拡散分析法に基づいた市販乳児用食品中フッ化物分析による一日フッ化物摂取量を推定した。さらに国民栄養調査表に即した食品群中からマーケットバスケット法によって収集した食品のフッ化物分析を行い,1歳から9歳までの一日フッ化物摂取量を暫定的に推定した。微量拡散法による食品(4種:かゆ,粉乳,牛肉,ケール)は拡散時間60℃,12時間でほぼ平衡に達した。牛肉の参照値(0.22ppm)による比較では98.6%と良好な収率を得た。またHAP添加によるフッ化物回収率91-02%ときわめて良好であった。さらにブランク値も0.019ug(SD0.0027ug)と極微量であり,当該食品試料に対するフッ化物分析法の信頼性は保証されると考えられる。したがって本微量拡散法が低濃度フッ化物食品試料にも適用可能であることが示された。これに基づいてマーケットバスケット方式による食品収集(56品目)とフッ化物分析による1-9歳までの一日フッ化物摂取量を試算した結果,1歳:0.29mg,3歳:0.31mg,6歳:0.32mg,9歳:0.34mgと評価された。フッ化物分析としてのテフロン製微量拡散-イオン電極は,すべての食品に適用できる保証はないが,食晶の前処理(乾燥,粉末)を工夫して,拡散溶液の選択と時間,温度など最適条件を管理することにより,大部分の市販食品のフッ化物を日常業務として測定することができるものと考えられた。
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