研究概要 |
20歳以上の同意の得られた成人414名について,デジタルカメラを用いて容易に口腔内撮影ができるように,一部照明装置を改良し,被検査者に対して唇側面のみの撮影を行った。撮影終了後,唾液を吐出法にて採取した。続いて,十分な人工照明下で,口腔診査を,歯の状況及び補綴状況についてはWHOの基準に従って行った。また,歯周疾患の診査は,CPIとRussellのPIの石井・吉田変法を用い,同一の診査者が診査した。採取した唾液は,氷温下で保存し,可及的に速やかに潜血反応(サリバスター応用)・グルコース・ラクテート濃度(酵素電極法)を測定した。また,あわせて,生活習慣に関する問診票を回収し,さらに,デジタルカメラでの口腔内撮影をコンピュータディスプレー上に再現し,これからRussellの臨床診断を行った。 昨年の検討から,この臨床診断と唾液中の潜血反応ならびに唾液中グルコース濃度がCPIのコード3・4との相関が比較的強く,多重ロジステック解析からも同様な成績が得られ,さらに喫煙が唾液潜血反応と臨床診断の像の読取りに影響すること分かっており,これを考慮し,CPIコード3・4を有する者を有病者として,口腔内画像の読取りからの臨床診断および喫煙状態,唾液潜血反応および唾液中グルコース濃度による複合判定のスクリーニングレベルの設定し,実施したところ,この群では鋭敏度96.3%,特異度63.8%で陽性的中率24.3%,陰性的中率99.0%であった。さらに,他の成人集団540名について同様にスクリーニングを実施したところ,敏感度76.9%,特異度71.9%で,陽性的中率22.6%,陰性的中率96.7%であった。 以上より,テスト陰性者についてはほぼ健常者のみであったことから,歯科関係職種がいない地域(遠隔地など)での,1次スクリーニングとしての実施応用の可能性についても示唆されたと考えられた。
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