研究概要 |
近年,歯科医学教育で医療面接技法を教育することの重要性が強調されるようになってきた。本研究は臨床コミュニケーションを効果的に臨床教育を行うにあたり,傾聴技能を明らかにすることを目的に検討を試みた。 面接行動の観察するシステムを診療室の歯科診療ユニット2台に設置した。被験者は現在臨床実習中の6年生である。初診外来を訪れた患者に対して承諾を得た後,医療面接を行わせ,面接風景をビデオテープにて録画した。なお,これまでに行われた講義や実習の問題点の抽出と,教育効果がどの程度あるかについても確認する意味で直前での講習はしなかった。終了後に教員が手分けしてビデオ再生し傾聴技能について検討を行った。また評価者間のばらつきが生じないよう同一ビデオにて意見調整をした。 面接時の傾聴技能の評価は,態度,技術,時間を考慮し集計した。態度に関しては,患者の名前は確認したがほとんどの学生は自己紹介をしなかった。またマスクをしたままの学生も多くみられた。現病歴などの内容を聴取した後に口腔内診査へ移行したものと最初に口腔内を確認した後に現病歴の聴取に入ったものの2タイプがみられた。時間に関しては,総面接時間は平均25分程度で,患者と会話をして視線を向けている時間よりも明らかにカルテを記入している時間の方が長かった。また,質問回数以上に患者自らが多く語ることはあまりなかった。診療に関する内容がほとんどで社会的内容はほとんどみられなかった。 以上のように,患者が問題を抱えてきている初診外来場面ということもあるが,医療面接というよりはこれまでの問診に過ぎない傾向が観察された。今後は面接行動観察システムと視覚行動システムを用いて,歯科特有の医療面接スキルを明らかにしていくつもりである。
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