前年度は、老化促進マウスで、固形食飼育より粉末食飼育の方が早期に老化徴候を示し、生存期間が短くなることを報告した。そこで今年度は、歯を抜歯して口腔からの刺激を少なくすることによりどのような影響が生じるかについて検討を行った。 実験方法としては、老化促進マウス68匹を生後5週でネンブタール麻酔下で、上下左右臼歯、上顎左右臼歯、下顎左右臼歯を抜歯した。なおコントロールは、麻酔のみ行った。体重、飼料摂取量、SAM研究会による老化度指数、動物自発運動量測定装置(ロコモセンサ、前年度購入)を用いた自発運動量、舌へのアミロイド蛋白の沈着ならびに、生理的死亡時期を検討した。 その結果 1、体重、飼料摂取量は各群間に差は認められず、粉末飼料で飼育した時と同様であった。 2、老化度指数は、コントロール群に比べ抜歯した3群とも高く、また自発運動量はコントロール群に比べ低くなり、早期に老化が進行していることが明らかになった。しかし粉末食マウスに比べると老化の進行が遅い傾向が認められ、これは前歯部を抜歯していないためであろうと考えられた。また抜歯部位による差は認められなかった。 3、アミロイド沈着は、24週でコントロール群ではアミロイドの沈着がわずかに認められたのみであったのに対し、抜歯群では既に乳頭直下に帯状のアミロイドが沈着しており、生体内でも老化が既に進行していた。 4、死亡時期は、コントロール群と比較して、抜歯群は早かった。 以上のことより歯を抜歯することにより、老化が早期に進行し、寿命も短くなることが示唆された。
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