マウスは夜行性であり、活動量は昼間に比べ夜間が多いが、老化に伴いその活動周期が乱れてくることが報告されている。そこでこの特性を利用して明期と暗期の活動周期の乱れに歯の喪失や粉末食飼育がどのような影響を及ぼすかを調べた。 実験材料としては老化促進マウスSAM P1 TA(以下SAMマウスと略す)50匹を用いた。30匹は生後5週でネンブタール麻酔下(20mg/kg腹腔内注射)で、10匹ずつ上下顎左右臼歯、上顎左右臼歯、下顎左右臼歯を抜歯し、固形飼料(日本クレア社製CE-2)で飼育した。20匹は、同時期に麻酔のみ行い、10匹は固形飼料(コントロール群とする)で、他の10匹は固形飼料を粉末化した粉末飼料で飼育した。体重、飼料摂取量、SAM研究会による老化度指数、動物自発運動量測定装置(ロコモセンサLCM-20C東洋産業社製、平成11年度科研費で購入)を用いた自発運動量を検討した。自発運動量は1時間毎の運動量を13時から24時間継続して測定し、室内の環境条件を6時より18時まで点灯の明期、18時より6時まで消灯の暗期とし、明期と暗期の運動量を比較した。 体重、飼料摂取量は各実験群で差は認められなかった。老化度指数、運動量は、粉末食群が最も老化が早く、運動量も早期に減少し、次が抜歯群で、抜歯部位による差は認められなかった。コントロール群が最も老化が遅く、運動量も多かった。明期と暗期の運動量の比較は、各群とも幼若期より36週までは、暗期の運動量が全体の60〜70%であり、暗期に活動し明期は活動が減少していることが明らかになった。コントロール群では、60週までは暗期の運動量が明期の運動量よりも多かったが、それ以降は明期と暗期の運動量がほとんど同じか、明期の運動量の方が多い時も認められ、明期と暗期の区別が困難になった。粉末食群は40週、抜歯群では44週より明期と暗期の割合がほとんど同じになり、コントロール群に比べ全ての実験群で早期に明暗期の区別が困難となった。また抜歯群では抜歯部位による差は認められなかった。 歯の早期喪失や粉末飼料飼育によりSAMマウスでは明暗の活動周期の乱れる時期が早期になることが明らかになった。
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