研究1:下顎骨の三次元有限要素モデルより、生体との等価性があることが確認できた。このモデルを用いてクレンチング(500N)が顎関節に及ぼす影響を調べたところ、どのような拘束条件においても下顎頭表面が顎関節円板や下顎窩よりも最も偏位する。また、下顎の中切歯・犬歯・第一小臼歯・第二小臼歯・第一大臼歯・第二大臼歯のそれぞれの咬合異常により顎関節に加わる応力と偏位を調べたところ、下顎の中切歯の不正配列が下顎頭表面・顎関節円板・下顎窩に最も悪い影響を与えた。すなはち、前歯の早期接触がある状態でのクレンチングは顎関節異常をおこす因子の一つであることが解明できた。 研究2:クレンチングによりスプリントが効果をあげるメカニズムを解明することでは、スタビライゼーションオクルーザルスプリントとバイオセクショナルスプリント(BSスプリント)の2種類を用いた。その結果、スタビライゼーションオクルーザルスプリントでは、顎関節円板や下顎窩の後方部では平均1Kpa以下の応力がかかるのみであった。また、BSスプリントはスタビライゼーションオクルーザルスプリントよりも顎関節部にかかる応力は少し大きいが、ほぼ、近似した値であった。そのため、両側臼歯部の咬合接触のあるスプリントはクレンチングによって生じる咀嚼系の激しい力に抵抗するのに最も適していることが証明できた。 研究3:頭・頸部の三次元有限要素モデルを作製し、生体との等価性があることが確認できた。モデル上で咬合異常を作り、それにより顎関節、頸部(頸椎、頸部の筋肉)に及ぼす影響を解明することを現在、行っている。早期接触の実験モデルとして臼歯部を少し高くした場合の影響について解明中である。
|