近年、障害児の歯科医療に関する需要に対し、その供給は質、量ともに徐々に充実されつつある。しかしながら障害の種類、程度によって、その治療は困難な場合も多く、障害児の口腔内には、多数のう蝕歯が処置されずに放置されている場合も多く認められる。障害児のう蝕を減少させるためには乳幼児期からの歯科保健指導や管理システムが必要であると考えられる。 そこで、各年齢層の健常児ならびに心身障害児が、診療室で術者のいかなる診療行為をどの程度受け入れることが可能かを把握することによって、障害の種類、患児の年齢にあわせた口腔保健ケアーを実施する最適な間隔を検索した。 本年度は、これまでに得られた、6歳未満、6〜8歳、9歳以上の健常児(男児29名、女児31名)に、電気エンジン、エアータービン、注射を用いて、独立した刺激を与えた場合の外部行動変化をVTRにより記録し、外部行動変化の出現状況を体(四肢)、目・顔、口、音声に分けて観察した結果と、障害児(自閉症児10名、精神発達遅滞児19名)に術者がブラッシングを行っている場合の外部行動変化について同様に出現状況を分析した結果を比較検討した。 さらに、障害児の歯科治療への適応性を高める目的で、自閉症児2症例で5回、精神発達遅滞児4症例で4回のブラッシング処置を行い、その学習効果を調査した。 (結果) 1.健常児では、目・顔の出現率が明らかに高かったのに対し、障害児では、目・顔とともに体の出現率が高くなっていた。 2.障害別の出現率は、精神発達遅滞児より自閉症児で高く、出現総得点では約2倍以上の出現率であった。 3.本調査では、障害児のブラッシングの繰り返し効果は認められなかった。 4.障害児の口腔保健ケアーを実施する最適な間隔については、本調査では明らかにすることはできなかった。
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