小児の歯科診療を行う上で、不安や恐怖を持った年少児や非協力時に対する対応法は、治療や齲蝕予防管理を成功させるための重要なポイントである。これらを実現させるためには、対象とする個々の患児の性格や不安因子を的確に分析し対応しなければならない。そこで筆者らは、歯科治療現場で必要な子供からの心理情報をより簡単にしかも短時間で分析するために、歯科診療の場面に登場する歯科医師、歯科衛生士、母親などの人形と歯科医院を箱庭化したジオラマを作成し、そこに置かれた人形の位置関係から小児の歯科協力性や適応度、人間関係が把握できるのではないかと考えた。そして、色彩心理および造形学的観点から人形を作成し、本学歯学部小児歯科外来に訪れた小児に対し応用してみた。本年度においては、人形の作成および4〜5才の小児に対して本法を実施した、作成された人形は、不必要なイメージを感じさせないように、顔は無表情で服装もパステル系の色調とした。人形の大きさは3、4歳の小児でも容易に使用できるように大きさは約4cm〜10cmとし、軽量なバルサ材で作成した。また、容易に人形がジオラマに配置出来るように、足部には、磁性材料を接着した。歯科医院を箱庭化したジオラマは、中央には人形のサイズに合わせて、デンタルチェアーを配置した。本法を実施した結果、小児の家庭環境(家族構成とそれぞれの人間関係)やデンタルスタッフとの関係をよく表していた。また、デンタルチェアーとの距離から歯科診療との適応状態も判定できることが分かった。
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