研究概要 |
東京医科歯科大学歯学部附属病院に来院した小児患者56名(乳歯列15名,混合歯列26名,永久歯列15名),およびその親を対象に研究を行なった.小児は,唾液および可及的に全顎のプラークサンプルを,その親からは唾液サンプルを採取した.採取した総家族数は,42家族で,うち37家族は両親からのサンプルの採取が可能であった.口腔内の診査としては,PMA indexおよびOHI indexを行なった.PCR法によって採取したサンプル中の歯周病原性細菌7菌種の検出を行なった.対象とした菌種は,Actinobacillus actinomycetemcomitans(Aa),Bacteroides forsythus(Bf),Compyrobacter rectus(Cr),Porphyromonas gingivalis(Pg),Prevotella intermedia(Pi),Prevotella nigrescens(Pn),Treponema denticola(Td)であった.親子の,唾液中の歯周病原性細菌の検出頻度を比較した場合,Aaは,子から,1.8%検出されたのに対し,付き添いの親からは,7.1%検出された.Bfは,子から25.0%,親から54.8%検出された.同様にCrは,87.5%,88.1%検出され,Pgは,7.1%,54.8%,Piは,12.5%,23.8%,Pnは,25.0%,28.6%,Tdは,54.8%,88.1%検出され,特にPgが,親の検出頻度に比べて子供の検出頻度が小さかった.子供に関して,各歯列の子供における歯周病原性細菌の検出頻度の比較において,混合歯列の子供において他の歯列の子供と比べ,有意にPnの検出頻度が高かった.また,Pnが検出された子供のほうが検出されなかった子供よりPMA indexが高かった.さらに,Bf,Td,Pi,Pnが検出された子供のほうが検出されなかった子供よりもOHI indexのDI-Sが高かった.また,Bf,Pi,Pnに関しては親が唾液中にそれぞれの菌をもっている子供のほうが,親がもっていない子供より有意にそれぞれの菌が子供の口腔内に検出される頻度が高かった.これらの菌の親から子への伝播の可能性が疑われた.
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