研究概要 |
小児およびその親の口腔から細菌サンプルを採取しPCR法によって歯周病原性細菌7菌種の検出を行なった。親子の唾液中の歯周病原性細菌の検出頻度を比較した場合、特にP. gingivalisが、親の検出頻度に比べて子供の検出頻度が小さかった。B. forsythus, T. denticola, P. intermedia, P. nigrescensが検出された子供の方が、検出されなかった子供よりもOHI indexのDI-Sが高かった。また、B. forsythus, P. intermedia, P. nigrescensに関しては、親が唾液中にそれぞれの菌をもっている子供の方が、親がもっていない子供より、有意にそれぞれの菌が子供の口腔内から検出される頻度が高く、親から子への伝播の可能性が疑われた。特に、混合歯列期の女子においてB. forsythusは80%以上検出され、男子と比べ、有意に高い検出率であった。このことから、B. forsythusの家族内の伝播についてタイピングを行って調べた。AP-PCR法によるB. forsythusのタイピングを64名の歯周疾患患者から分離培養した138株について行ったが、11種にタイプ分けすることができた。そこで13名の夫婦の口腔からB. forsythusを分離培養したところ、3組において夫婦の両方からB. forsythusを分離培養することができたが、夫婦はすべて同じ、genotypeであった。このことから特にB. forsythusにおいて家族内伝播がおきていることが示され、混合歯列期の女子においては、親から子への伝播の危険性が高いと思われた。これらの結果をまとめると、小児において、歯周病原性細菌の定着に関る要因として、親からの歯周病原性細菌の伝播、混合歯列期における一時的な歯周ポケットの存在、口腔清掃のレベルが考えられた。
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