研究概要 |
線維芽細胞は創傷治癒や炎症の際にアルカリホスファターゼ(ALP)を強く発現する。今回、ALPの誘導を促進する因子を調べ、この応答に及ぼす細胞外マトリクス(ECM)の影響について検討した。アスコルビン酸2リン酸(AsAP)はヒト健常歯肉由来線維芽細胞にALP活性とタンパクの発現を誘導した。transforming growth factor-β(TGF-β)は細胞の生存を促す低い濃度ではAsAPによるALPの発現を増強し、増殖を刺激する高濃度ではこれを抑制した。ヒト歯肉線維芽細胞をAsAP/TGF-β/10% FBSで刺激するとcollagen,fibronectin,tenascin,thrombospondin等の沈着した肉芽組織類似のECMが形成された。このモデル系においてAsAP/TGF-βはALPの発現を誘導した。一方、結合組織モデルの3次元コラーゲン・ゲル培養ではAsAP/TGF-βはALPの発現を誘導しなかった。以上の結果から、アスコルビン酸と細胞の生存を促す濃度のTGF-βの組み合わせは線維芽細胞にALPの発現を促進することが示された。これらの因子に対する線維芽細胞の応答性ECMの環境に影響される。
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