研究概要 |
GTR法の適応となる三壁性骨欠損がどのような修復過程を経て,どのレベルまで骨が再生されるのか,あるいはどの程度の新付着が得られるのかなど,臨床的なバックグラウンドに立脚した基礎的な研究はほとんど無いのが現状である。この研究の目的は,そのような現状を踏まえ,再生療法の適応である3壁性骨欠損に対して、その治癒過程において欠損の形態や大きさがどう影響するのかを検討しようというものである。カニクイザル8頭の下顎両側に実験的3壁性骨欠損を作り,骨欠損の大きさ(欠損容積と深さあるいは歯根からの距離)によって骨再生がどの程度まで得られるか,また,結合織性再付着がどの位置まで回復するか,について検討した。すなわち,(1)骨欠損形態について:骨欠損形態はすべて3壁性。骨欠損の大きさは,歯根から近遠心的な距離km,頬舌的幅径をBmm,歯槽骨縁から垂直的な距離をCmmとし骨欠損容積をAxBxCmm^3とした。A, BおよびCの距離は1,2,4mmとし,骨欠損容積は2〜16mm^3とした。(2)術式:通法に従い歯肉剥離掻爬手術を実施した。実験的的骨欠損作成後,実験側はそのまま,粘膜骨膜弁を閉鎖し,対象側には人工骨およびe-PTEE膜を設置した。(3)評価法:術後3ヶ月で屠殺し,組織切片を作成し,HE染色を施し組織形態計測を行った.その結果,2mm^3の小さな骨欠損では,局所の感染源を取り除いた状態にすると,生体の有している治癒能力によってほぼ骨欠損は修復されることが分かった.しかし,骨欠損が8mm^3を超えるとコントロール群では骨欠損程度はほとんど改善しておらず,骨移植や歯周組織再生誘導法を行わないと周囲組織の再生は認められないことが分かった.さらに骨移植材を用いた場合には骨組織の修復は認められるものの,上皮の深行増殖が認められ,結合織性付着の回復には歯周組織誘導再生法のみが有効であることが分かった.
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