研究概要 |
シクロオキシゲナーゼ2によりアラキドン酸から合成されるプロスタグランジンが炎症においては重要な役割を果たすが知られているが、歯肉線維芽細胞におけるシクロオキシゲナーゼ2に関連した報告は少ない。本研究では歯肉炎症のメカニズムを解明する目的でIL-1β刺激によるシクロオキシゲナーゼ2遺伝子の発現機構について検討を加た。 シクロオキシゲナーゼ2遺伝子には転写因子NFκB結合配列が見いだされており、IL-1β刺激にけるNFκBの関与について検討を行った。IL-1β刺激した歯肉線維芽細胞から核内タンパク質を抽出し、シクロオキシゲナーゼ2遺伝子のNFκB結合配列との結合性をゲルシフトアッセイにより測定した。IL-1β刺激後15分に結合性は増大し、60分に最大となった。競合実験では100倍量のシクロオキシゲナーゼ2のNFκBまたはコンセンサスNFκBによりNFκBとの結合が抑制された。NFκBを構成するp-50,p-65の抗体を用いた結合実験では抗体の濃度依存的に結合の消失が認められた。 リン酸化の影響を調べた結果、チロシンリン酸化阻害剤によりNFκBの核内タンパク質との結合が抑制されることが、ゲルシフトアッセイにより示された。チロシンリン酸化阻害剤をIL-1β刺激を行った歯肉線維芽細胞に作用させると、ノーザンブロティング法によるシクロオキシゲナーゼ2mRNAの発現が抑制された。これに反して、チロシンフォスファターゼ阻害剤はシクロオキシゲナーゼ2mRNAの発現を亢進した。プロスタグランジンE_2産生においてもチロシンリン酸化阻害剤はIL-1β刺激によるプロスタグランジンE_2産生を抑制し、チロシンフォスファターゼ阻害剤をIL-1βと同時に作用させると、プロスタグランジンE_2産生は増加した。 以上の結果より、IL-1βはチロシンリン酸化を介するシクロオキシゲナーゼ2遺伝子発現を介してプロスタグランジンE_2を産生する事が示された。またシクロオキシゲナーゼ2遺伝子発現にはIL-1β刺激により転写活性の上昇が認められ、NFκB結合配列が重要な役割を果すことが示された。
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