研究概要 |
本年度は、前年度に引き続いて,歯肉溝滲出液(GCF)中の好中球を採取,その機能の変化から局所の病態に関する各種の情報を比較的簡便に引き出す手技の確立と,実際に細胞に生じる様々な現象の検索を行った。 まず全身疾患を伴わない歯周病を有さない被験者より,末梢血,GCF,唾液中好中球を分離採取し,様々な条件下で刺激した後の各好中球内の酵素活性を検索した。 すなわち各好中球群を,PBS,PMA,FMLP,唾液,熱処理唾液にて37℃で30分間インキュベート後に,各群の細胞内エラスターゼ,コラゲナーゼ,カテプシン活性をCell ProbeTMを使用して蛍光染色した。その後に,フローサイトメーターにて平均蛍光強度を計測後,統計解析を行った(Cytoenzymologyの手技の確立)。さらに炎症メディエーター(LPS、TNFαなど)やタバコの煙の中に含まれる,ニコチンやコチニンなどの刺激後の細胞内酵素活性変化も解析した。 その結果,無刺激の状態では,末梢血好中球の各酵素活性はGCF,唾液内のものより低いこと,炎症メディエーターやタバコの煙の中の物質にさらされると,その活性が上昇することが示された。また,GCFや唾液中の好中球は最初から酵素活性は高いが,刺激による反応は鈍い傾向にあった。 よって現在試みているCytoenzymologyは,好中球内の酵素活性を簡便に測定可能で,このことは歯周組織に加わっている様々な侵襲の強さを,好中球の酵素活性変化を通して探知可能であることが示された。このことは好中球内の酵素活性を診断マーカーと考え,それをもとに診断システムを確立する上で,重要な要素になると考えられた。
|