【方法】実験には生後7週齢、体重約170gのJCLウィスターラットを用いた。すべての動物の上顎右側第2臼歯の歯頚部にナイロン系を結紮することにより実験的歯周炎を惹起させた。実験期間中、5×5mmの網目を有する金網をラットに巻き、両端を折り曲げて固定する拘束ストレス法を用い、ストレス負荷群のラットには、夜間12時間拘束ストレスを与えた。非ストレス負荷群のラットにはストレスを与えず、その他の条件はすべて同じとした。各群の動物は、0、7、14、21日で6匹づつのラットを屠殺前に空腹時および経口ブドウ糖負荷試験による血糖値の測定、屠殺時に末梢血を採取し、血漿副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)濃度、カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)濃度を測定し、さらに胸腺および脾臓を摘出し、体重に対する相対重量を測定し、全身のストレス度合いを検索した。今後、上顎は通法に従い、右側第2臼歯の連続組織切片を作製し、根分岐部を病理組織学的に検索する予定である。 【結果】ストレス負荷群では、7、14、21日いずれの日においても、体重の増加率の低下および経口ブドウ糖負荷試験による血糖値の変化が認められた。特に経口ブドウ糖負荷試験に関しては、ストレス負荷群では非ストレス負荷群よりも、糖負荷前では血糖値が増加したのに対し、糖負荷後30分、60分、120分後では、逆に血糖値が低下した。これまでは、ストレスにより血糖値は上昇すると報告されているが、糖負荷後の血糖値低下の結果に関しては、これまでに報告がないため、ストレスとしての新たな知見であるものと思われる。今後、神経生理学的にも検討する余地があるものと思われる。
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