| 研究概要 |
【目的】近年、ストレス暴露による視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA-axis)の反応に影響が及ぼされることについて報告されてきており、本研究は、ウィスター系ラットを用いて実験的歯周炎に対する拘束ストレスの影響をHPA-axisおよび自律神経系両方の観点から検索することを目的とする.
【方法】実験には、JCLウイスターラット各100匹を用いた。動物の上顎右側第2臼歯の歯頚部にナイロン糸を結紮し、N群(非拘束ストレス)、S群(拘束ストレス)の2群(各群50匹)に分けた。N群にはストレスを与えず、S群は糸挿入後、金網による拘束ストレスを毎日12時間行った。各群の動物は、ストレス負荷直前,および負荷後2、4、6、8、10日で採血処置を行い、2、4、6、8、10日で各群10匹ずつ屠殺した。その後通法に従い,上顎右側第2臼歯の連続組織切片を作製し、根分岐部を病理組織学的に観察した。
【結果】N、S群とも実験開始時は170gであったが、S群ではストレス負荷後、低い体重増加を示した。ブドウ糖負荷試験では、S群で空腹時血糖値が上昇していた。血漿コルチコステロン、ACTH、アドレナリンは、S群はN群に比較して有意に上昇した。また、胸腺,脾臓の相対重量は、S群で有意に減少しており、免疫系の減弱および交感神経系の刺激による委縮が推察された。S群は組織形態計測学的に上顎第2臼歯の根分岐部では8、10日目で歯槽骨吸収が有意に進行していた。
【考察】ラットに拘束ストレスを与えると、検査所見としてのHPA-axisおよび自律神経系両方の観点において対照群以上に反応し、病理組織学的でも歯周組織において歯周炎の進行を認める所見が得られた。
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