中心金属を変化させた種々アート錯体を用いて検討を行ったところ、生体内で酸化還元反応を行っているとされるFe(II)、Mn(II)、Co(II)を中心金属としたアート錯体は配位子転移反応を起こさず、一電子移動反応(ピナコール型カップリング反応や脱スルホニル化反応や脱アリル化反応や脱ベンジル化反応ジハロゲン化合物のカップリング反応、およびカルボニル化合物のピナコール型カップリング反応)のみを進行させることが明らかとなった。さらに本反応は、アート錯体に特徴的な反応であり、また、系内に再還元剤であるMg金属を共存させると触媒的にも一電子移動反応が進行することが明らかとなった。この結果は、アート錯体における初めての反応形態であると同時に、配位環境によって一電子移動反応がある程度制御できるということも示唆している。
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