本年度は、触媒的環化アルケニル化反応と逆電子要請型の連続的な環化反応をハイブリットした新合成手法の開発に成功し、植物制御物質として知られている3種のジベレリン(GA)の全合成を完了した。特に今回合成したGA_<111>ならびにGA_<112>は、天然界からの単離が極めて困難であるため、その詳細な活性が明らかにされていなかった。今回開発した実用的とも言える合成法は、上記したジベレリンの生理作用と構造活性相関の解明に貢献できるものと考えている。さらに本法は、ジベレリン骨格の12位に酸素官能基をもつ他のジベレリン類の合成にも適応可能であると考えられる。 さらに連続的なラジカル転位反応をジベレリンと同程度の植物生長活性をもつグミフェロール酸の合成に適用し、メチルグミフェレートの最初の全合成を達成した。本研究においては、置換基の立体電子効果をフリーラジカルの反応性の制御に利用することにより、ワンポットで望む立体化学を有する多環性化合物の構築を達成した。 今後は、本法の医薬品合成への展開が新たな目標になる。
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