研究概要 |
効率的な合成法を指向するための有効な手段の一つに,反応剤の触媒的な利用が挙げられる。また,連続反応にフィットした基質分子を設計しワンポットで複数の結合の形成を実現することも,有用生理活性物質の効率合成にとって不可欠な要素である。本研究では,上記した二つの重要因子をハイプリットした新しいタイプの合成手法の開発を行い,植物生長制御ホルモンであるC_<20>ジベレリン類(GA)を高効率的に合成することを目的とした。 触媒反応としては,最近著者自ら開発したパラジウム触媒による環化アルケニル化反応を用い,さらに連続的電子移動反応として環化付加反応を利用した。すなわち,C_<20>ジベレリン類のCD環部に相当するビシクロ[3.2.1]オクタン部を,先ず5mol%の酢酸パラジウムを用いる環化アルケニル化反応を利用し,好収率で合成した。続いて,ビシクロ[3.2.1]オクタン環部の構造上の特徴を利用し,ジエンならびにジエノフィル部を立体選択的に導入後,第二の鍵反応である逆電子要請型の分子内環化付加反応によりC_<20>ジベレリン類のAB環部に相当するトランスヒドリンダン部の構築を行い,C_<20>ジベレリン類の四環性炭素骨格を単一物として得た。最後に,官能基化を行い,全てのジベレリン類の生合成中間体として知られるGA_<12>の全合成,ならびにC環部上に酸素官能基を有するGA_<111>およびGA_<112>の最初の全合成を達成した。 また本法を,C_<20>ジベレリン類の不斉合成に展開すべくさらなる検討を行った結果,上記したC_<20>ジベレリン類の形式的不斉合成にも成功した。 さらにハイブリット型合成手法を,連続的ラジカル転位反応や分子内ヘテロ環化付加反応に適用し,植物成長制御物質であるグミフェロール酸メチルや抗ウィルス活性アルカロイドのマピシン類の効率的な全合成にも成功した。
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