研究概要 |
1.アルケンに対するラジカル環化反応において,アルケン末端に硫黄原子やシアノ基を導入すると,環化反応がexo型でのみ効率良く進行することを見出した.また,これらの結果に対する機構的考察を行うと共に,本反応を(±)-イパルビジン及び(±)-フイゾスチグミンの重要中間体の合成に応用した. 2.5-exo型ラジカル環化反応を用いる(3R^*,3aS^*,7aS^*)-3-アリールオクタヒドロインドール-2-オン類の立体選択的合成法を見出し,本反応を(±)-パンクラシンの形式合成に応用した. 3.N-ビニル2-ヨードベンズアミドのラジカル環化反応の位置化学について検討し,6-endo環化体はアリールラジカルの5-exo環化と引き続くネオフィル転位を経て生成していることを明らかにした. 4.N-(o-ブロモベンジル)エナミドのアリールラジカル環化反応について検討し,オレフィン上に置換基を持たない化合物のラジカル環化反応が6-endo環化体のみを与えるという初めての例を見出し,また,オレフィン末端に2つの硫黄原子を導入すると5-exo環化体のみが得られることも明らかにした.さらに,5-exo選択的アリールラジカル環化反応を抗ヘルペスウイルス活性物質マッピシンケトンのモデル化合物の合成に応用した. 5.ハロゲン化合物のラジカル反応においてはクロロ原子よりもヨウ素原子を用いる方が良い結果を与えることが知られている.ところが,α-ハロアミドの5-endo型ラジカル環化反応においては,クロロ原子を用いると好収率で環化体を与えるが,ヨウ素原子を用いると環化体がほとんど得られない,という興味深い結果を与えた. 6.酢酸マンガン(III)-酢酸銅(II)系を用いるα-メチルチオアミドの酸化的ラジカル環化反応を見出し,本反応をエリスリナン骨格の短工程合成法を応用した.
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