研究概要 |
1.鉄錯体の1,3-移動で非配位となったオレフィン部を四酸化オスミウムを用いて酸化することにより、鉄カルボニル部の不斉を利用して立体選択的に1,2-ジヒドロキシ化が可能であることを既に明らかにしているが、今回はこのsyn-ジオールを利用して異なる種々の官能基導入が可能かどうかを検討した。その結果ジオールをオルトエステルに変換したのちに、BF_3・Et_2Oのようなルイス酸存在下で求核置換反応を行えば、ヘテロ原子あるいは炭素置換基をα-位へ位置及び立体選択的に導入可能であることを明らかにし、1,3-ポリオールの新規な立体選択的合成法を開発した。 2.トリエン鉄錯体を適切な塩基で処理すれば、鉄カルボニル部が立体選択的に1,3-移動することを既に明らかにしているが、さらにその有用性を高めるためにポリエン鉄錯体への連続的な1,3-移動を検討した。その結果、光学活性なテトラエノン錯体に対しNaHやKN(TMS)_2を作用させると連続的な1,3-移動反応が起こり、1,3-移動体は全く生成せずに1,5-移動体のみが選択的に合成できることを明らかにした。さらに得られた1,5-移動体のケトンを立体選択的に還元することにより、通常の方法では立体制御が困難な1,10-ジオールを唯一の不斉源を用いて不斉合成することに成功した。また、本手法を光学活性なトリエノン錯体に応用し、抗菌活性を有するepipatulolide Cの不斉全合成も達成した。 3.HIV-1プロテアーゼ阻害活性を有するDidemnaketal AやMacrolactin Aのサブユニットの不斉合成を目指し、連続的な繰り返し反応の可能性を検討した結果、1,2-syn-2,3-anti-3,4-syn-テトラオール誘導体および1,3-anti-ジオール誘導体の立体選択的な合成にも成功した。
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