研究概要 |
1.アルデヒド、ケトン、エステル、ニトリルなどの電子吸引基を有するポリエン鉄錯体に対し、KN(TMS)_2,LiCH_2CN,NaHのような求核剤を作用させると、鉄カルボニル部がオレフィン上を2炭素あるいは4炭素移動し、電子吸引基側のジエンに移動した鉄錯体が収率良く得られることを明らかにした。 2.鉄錯体がオレフィン上を1,3-あるいは1,5-移動する際に、鉄錯体部の不斉は保存されそれぞれ反転あるいは保持で反応が進行することを初めて明らかにした。これにより1,n-移動(n:奇数)を利用した不斉炭素構築法の開発が可能であることを明らかにした。 3.鉄錯体の1,3-移動で非配位となったオレフィン部を四酸化オスミウムを用いて酸化することにより、鉄カルボニル部の不斉を利用して立体選択的なジヒドロキシ化が可能であること、またこのジオールをオルトエステルに変換後求核置換反応を行えば、α-位とβ-位に異なる官能基を位置及び立体選択的に導入できることを明らかにした。 4.ポリエン鉄錯体における連続的な1,n-移動を、光学活性なトリエノンあるいはテトラエノン錯体に利用し、さらに隣接位ケトンを立体選択的に還元することにより、通常の方法では立体制御が困難な遠隔位の立体制御を行い1,8-あるいは1,10-ジオールの不斉合成に成功した。本反応の応用として、抗菌活性を有するepipatulolide Cの形式不斉全合成も達成した。 5.HIV-1プロテアーゼ阻害活性を有するDidemnaketal AやMacrolactin Aのサブユニットの不斉合成を目指し、連続的な繰り返し反応の可能性を検討した結果、1,2-syn-2,3-anti-3,4-syn-テトラオール誘導体および1,3-anti-ジオール誘導体の立体選択的な合成にも成功した。
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