研究概要 |
北アフリカ沖で採取されたホヤから単離された、新規3環性構造を有する抗腫湯性アルカロイドであるレパジホルミンを、分子内アシルニトロソDiels一Alder反応を鍵反応として用いて全合成することを意図して研究を開始した。基本合成戦略に従い、シクロヘキサン環外共役ジエン上に臭素原子を導入したアシルニトロソ化合物の分子内Diels-Alder反応について検討するため、その前駆体となるヒドロキサム酸の合成を行った。次いで、合成したヒドロキサム酸について通常の過ヨウ素酸酸化により反応系内に生成するアシルニトロソ化合物の分子内環化付加反応を試みたが分解反応が優先し、環化付加体の収率は極めて低いものであった。そこで、反応系内で生じるアシルニトロソ化合物を一旦アントラセン付加体として捕捉し次いで加熱すると、レトロDiels-Alder反応により再生するアシルニトロソ基が分子内Diels-Alder反応を起こし、レパジホルミンに対応する立体配置を持つB/Ccis-ヘキサヒドロ[1,2]オキサジノ[3,2-j]キノリノンが選択的かつ実用的な収率で得られることが判明した。ここに得られたB/Ccis-付加体より、オキサジン環開裂を経て合成したエポキシドヘの分子内求核置換反応によりピロリジン環を構築した後1-アザスピロ[4,5]デカン中間体に導いた。次いでアミノケトンの還元的分子内環化反応によりパーヒドロ[2,1-j]キノリン体を立体選択的に合成し、最後に脱保護することによりレパジホルミン提出式の全合成を達成した。しかし本合成品の^1H及び^<13>Cスペクトルデータは、天然レパジホルミンについて報告されているスペクトルデータとは異なっていることから、天然レパジホルミンの提出構造式は誤りであることを明らかにした。
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