研究概要 |
昨年度までに,ユリ科Galtonia candicans鱗茎より,HL-60細胞に対して強力な細胞毒性を有する2種の新規ステロイド配糖体galtonioside A,candicanoside Aならびに数種のOSW-1関連物質を見出した.OSW-1類縁物質は,ユリ科Ornithogalum saundersiae鱗茎から十数種得られているが,G.candicans鱗茎にも含まれていることを踏まえ,さらに,O.thyrsoides鱗茎の成分検索を行い,新たに8種の新規OSW-1類縁物質を単離し,その構造を明らかにした.上記3種のユリ科植物より得られた計19種のOSW-1類縁物質と5種の誘導体の細胞毒性活性を検討することにより以下のような構造活性相関に関する新知見を得た.1)aglyconの16位水酸基に結合している糖鎖から,アシル基,特に芳香族酸がはずれることにより活性は著しく減弱する.なお,芳香族の種類による差はほとんど認められない.2)xyloseにglucoseが結合すると活性は減弱する.3)aglyconの3位水酸基にglucoseが結合しても活性にはほとんど影響を及ぼさない.4)aglyconの3位水酸基に結合したglucoseの6位にさらに1分子のglucoseが結合することにより活性は著しく減弱する.5)4)の末端glucoseの4位に,さらにもう1分子のglucoseが結合しても活性はそれ以上減弱しない.6)OSW-1のaglyconの16位水酸基にarabinoseのみが結合した化合物も比較的強い活性を示すが,それにxyloseが結合すると活性は減弱する.7)aglyconの22位カルボニル基を還元すると活性は減弱する.強力な活性の発現に必須な16位のアシル化糖の役割については現在のところ全く不明であり,この役割を明らかにすることが新しい作用機序を有する抗癌剤の最終的な創製に繋がるものと確信される.OSW-1類とは別に,スピロスタノールならびにフロスタノール配糖体(ステロイドサポニン)類の細胞毒性についても検討し,構造活性相関を明かにした.さらに,ステロイドサポニンの細胞毒性メカニズムに関する新知見を得た.
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