最初に、各種シクロベラトリレンオリゴマーの選択的合成の合成素子として有用であるジプロモ非環状3量体[ビス(6-ブロモベラトリル)ベラトロール]に一級アミンを反応させることによるアザシクロトリベラトリレン骨格の構築を検討した。種々パラジウム触媒存在下ジブロモ非環状3量体とベンジルアミンとを各種条件にて反応させたが、目的のN-アルキル-5-アザシクロトリベラトリレンの生成は見られなかった。これは芳香環にメトキシ基が存在することにより、ブロモ基が不活性化しているからだと考えられる。次に、もう一つの合成ルートとして、2、2'-(ジヒドロキシメチル)ジアリールアミンを閉環前駆体とするアザシクロファンの大量合成を検討した。抗リウマチ薬であるロベンザリト{2[2-(カルボキシルフェニル)アミノ]-4-クロロ安息香酸}のボラン還元により得られるジオールを、ベラトロールとトリフルオロエタノール中、硫酸触媒下反応させ目的の10-アザ-8-クロロシクロトリベンジレン化合物(1)を中程度の収率で得ることが出来、最初の本骨格構築を達成することができた。過剰のベラトロールを用いた時には、非環状のビス(ベラトリルフェニル)アミン(2)が生成した。2をホルマリンと酸存在下、シクロテトラベンジレン骨格への閉環を試みたところ、ビシクロ化合物が得られた。本生成物の構造は明らかでない。これは窒素原子と芳香環との間にもメチレン架橋が起っているためである。2をメチル化した後、シクロテトラベンジレン骨格へ閉環することを現在検討中である。次に、(1)のN-メチル化を試みた。ホルマリンを用いての還元的アミネーションを試みたが、失敗に終わった。これはこの窒素原子の塩基性が極めて弱いことによるものと考えられる。そこで、DMF中、NaHを反応させた後、アルキル化することにより、N-メチル体を収率60%で得ることができた。各種脱クロル化による対称性の高い10-アザシクロトリベラトリレンへの誘導を試みたが現在まで成功していない。アザシクロファン(1)について薬理作用の検討を行った。Irwin法でマウスの行動に対する影響を観察したところ、ライジング反応が見られた。また、5種類の菌を用いて、ディスク法による抗菌活性を調べたが、活性は観察されなかった。既に、我々は、5-シラシクロトリベラトリレンがC_2対称性のキラル構造を有することを明らかにしているので、アザ誘導体についても4級化によりキラリティーの発現を試みた。しかし、種々メチル化による4級化を試みたが、先と同じく、塩基性の弱さからか、現在にいたるまでアンモニウム塩を得ることに成功していない。現在、別ルートによるアザシクロトリベラトリレン骨格の構築を検討している。
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