研究概要 |
Nikkomycyn BzのC-末端アミノ酸(polyoxin C)の炭素環類縁体(carbocyclic polyoxin C)の鍵合成中間体の効率的な合成法を開発した.すなわち,六員環によって(E)-型に幾何構造を固定した光学活性なα-アルコキシカルボニルニトロンである(5S)-5,6-dihydro-5-phenyl-2H-1,4-oxazin-2-one N-oxideとシクロペンタジエンとを室温で反応させると,ニトロンの立体障害の少ない面からexo-付加した環化体が76%の収率で得られた.この付加体をアセトニトリル-水中でモリブデニウムヘキサカルボニルで処理すると不斉補助基の除去とラクトン化が一挙に進行した化合物を与えた.これを単離することなく生じた第一級アミノ基を保護することにより,carbocyclic polyoxin Cの鍵合成中間体として知られている(1S,4S,5R)-4-Benzybxycarbonylamino-2-oxabicyclo[3.3.0]oct-7-en-3-oneが得られた. これまでNikkomycinの合成研究に用いてきたα-アルコキシカルボニルニトロンとアリルアルコールとの連続的なエステル交換,分子内環化付加反応の遷移状態に関して分子軌道計算を用いて詳細な検討を行った.その結果,Schreiberらが提唱したニトロンのE-型から進行する環化付加反応ではなく,Z-型から反応が進行していることが示唆された.また,光学活性なα-アルコキシカルボニルニトロンおよび光学活性な二級アリルアルコールを用いて立体選択性に影響を与えるファクターを系統的に研究した.その結果,立体選択性は,Z-型のニトロンを考慮することにより予測できるようになった.得られた知見を活かして,多官能基を有するβ-置換-α-アミノ酸のsyn-体とanti-体の合成法も開発した.
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