研究概要 |
1.トリネルビタン型ジテルペンを合成するため,まず2,6-ジメチルビシクロ[4.3.0]ノナ-1-エン-3,7-ジオン(1)のパン酵母還元による速度論的光学分割を詳しく検討し,光学純度98%ee以上の(R)-(1)を大量に合成する方法を確立した.続いてパラジウム触媒を用いるカップリング反応により,1の3位に炭素数6の側鎖,7位に炭素数3の側鎖を導入した.現在,閉環メタセシスを含む種々の方法により11員環の構築を試みている.2.原腸形成を特異的に阻害するヒッポスポンジン酸Aの類縁体の合成を行い,疎水性の側鎖部を炭素数20から炭素数10に短くすると,原腸形成阻害活性が約100倍向上することを見出した.3.C_2対称軸を有するトリテルペンエーテルのテスツジナリオールAの合成研究を行った.ヒッポスポンジン酸の合成中間体であるヒドロピラニルプロペノール誘導体にヒドロホウ素化,プレニル基の付加,エン反応を行って,分子の半分に相当するセグメントをエナンチオ選択的に合成した.続いてNi(COD)_2を用いてホモカップリングを行って,テスツジナリオールAとその二重結合に関する幾何異性体の混合物を得た.4.五つのテトラヒドロフラン環が連続して結合したメソ型トリテルペンのグラブレスコールの不斉合成を行った.ファルネソールからパン酵母還元,立体選択的エポキシ化,不斉ジヒドロキシ化などにより,二つのC15セグメントを合成し,これらをカップリングさせて提出されていた構造をもつ化合物を合成したが,天然物と一致しなかった.NMRを比較したところ,中央部付近に違いが見られたので,中央部の相対配置だけが異なるメソ化合物を合成したが,これも一致しなかった.この結果,天然物について構造を再検討する必要があることが確実となった.
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