研究概要 |
すべての生物は通常の環境下起こる様々なDNAの損傷を修復する多様な機構を備えている。損傷塩基を認識しそのN-グリコシド結合を切断、損傷塩基を除去するDNAグリコシラーゼもその1つである。我々は3-メチルアデニンDNAグリコシラーゼII(AlkA)のX線構造解析を行い、DNAグリコシラーゼスーパーファミリーの存在を見いだした。本研究の目的は、大腸菌AlkA(反応を起こさない変異型D238N)と基質DNAとの複合体並びにAlkA-基質ヌクレオシドの結晶化を行い、AlkAの構造を用いた分子置換法を用いて、その3次元構造を決定し、原子レベルの正確さでDNAグリコシラーゼが如何に損傷DNAを認識し除去するのかを解明することである。 alkA遺伝子を欠損させた大腸菌BL21(DE3,AlkA^-)を調製し、それにalkA変異型遺伝子を導入、AlkA変異型D238Nを大量生産し、純度よく精製した。中心にミスマッチ塩基対をもつDNAオリゴマー(鎖長は13mer)を合成し、D238Nとの複合体結晶を得るため、結晶化条件の検討を行っている。尚、結晶化条件の検討は、両者の複合体結晶を核酸の結晶化に実績のある沈殿剤を用いたスパースマトリックス法を行っている。 AlkA野生型と7-メチルグアノシン複合体の結晶化は、既に結晶化条件の確立した方法で調製した野生型結晶に7-メチルグアノシンを浸漬させることにより行っている。野生型結晶を7-メチルグアノシンを3種の濃度と時間で浸漬させ、100Kで高エネルギー加速器研究機構の放射光(PF)ビームラインBL18Bで測定し、分解能1.8Åの回折データ3種を得たが、現在のところ7-メチルグアノシンに相当する電子密度が観測できていない。現在さらに浸漬条件の検討を行っている。
|