研究概要 |
本研究では,金属ポルフィリン固定化担体(MP担体)の持つ酵素様機能を分析学的に応用することを目的として,以下に示す検討を行い,MP担体が人工固体酵素として臨床化学分析などの分析に利用できることを明らかにした. 1.昨年度と同様に,Tetraphenylporphine金属錯体,Protoporphyrin金属錯体やTetrakis(carboxyphenyl)porphine金属錯体(MP)を,ガラスビーズとシリカゲルに,スルホンアミドまたはアミド結合で固定化したMP担体を調製した. 2.イオン交換樹脂に固定化したMP担体を用いて,これが持つフェノール類に対する酸化触媒機能を検討し,Co-tetrakis(sulfopheny)porphineを固定化した樹脂がフェノール類のキノン類への酸化反応を触媒することを明らかにした. 3.昨年度には,MP担体のリノール酸ハイドロペルオキサイド(LOOH)に対するぺルオキシダーゼ様機能を,4-アミノアンチピリン・フェノール系による色素生成反応などを用いて検討したが,今年度はこの機能を用いて,LOOHの定量法を開発することができた. 4.MP担体のぺルオキシダーゼ様機能を検討し,Mn-P固定化ガラスビーズが,天然のぺルオキシダーゼとほぼ同等の酵素様機能を持つことを明らかにした.さらに,この機能が,ぺルオキシダーゼの代わりに過酸化水素の定量に利用できることも明らかにした. 5.MP担体の持つアスコルビン酸(ASA)酸化触媒機能とぺルオキシダーゼ様機能を利用して,ASAのフロー分析法を開発することができた. 6.MP担体の人工固体酵素としての挙動を知るために,その触媒メカニズム検討を共鳴ラマンスペクトルで開始し,八臭化金属ポルフィリンを含め中心金属の荷電の変化などを明らかし,メカニズムを解明する手掛りを得た.
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