1.平成11年度から継続して(オルト置換アリル)_m(フェニル)_nポルフィリン_<(m+n=4)>とその亜鉛錯体の合成・分離精製を行った。本年度は置換基が-NO_2の場合、m=3分画に焦点を絞り、その3種の回転異性体の亜鉛錯体をクロマトグラフィーによって分離し、それぞれ純品を得た。また置換基が-OCH_3の場合には置換数m=1の分画とm=2分画の1個の異性体が分離できた。しかし、m=2分画に存在する2種の置換位置異性体の2回転異性体、すなわち全4異性体のどれであるかは現段階では確認出来ていない。置換基に-NO_2を含むポルフィリンには蛍光は認められず、一方、-OCH_3の場合にはm=1の分画とm=2分画の異性体について、それぞれ異なる赤色蛍光スペクトルを示した。またこれら亜鉛錯体で数種の単結晶が得られた。 2.純品として得られた亜鉛錯体について軸配位子をピリジンおよびニコチンとしたスペクトル滴定を行い、その軸配位平衡定数を求めた。その値は対照としたZnTPPと比べ置換基が-NO_2と-OCH_3の両方共に大きくなった。このことは軸配位におけるポルフィリン分子面の認識において、これら置換基がピリジン類に対して親和的に作用していることを示した。さらに光学異性体の分割能と関連してニコチンの配位を検討したが回転異性体間には顕著な差異は認められなかった。 3.いくつかの亜鉛異性体の単結晶についてX線結晶構造解析を行った。その内の1例は3個のニトロ基がポルフィリン面の同じ側にあるものであり、ピリジンがその面側から配位する5配位構造であった。これにより軸配位子がポルフィリン分子面を認識していることを証明した。置換基が-CH_3の場合にニコチンを軸配位子とした不斉な亜鉛ポルフィリン回転異性体の単結晶が得られたが、ニコチンの絶対構造と異性体の構造の相関は構造不整のため解析不能であった。置換基が-NO_2と-OCH_3のニコチン配位錯体の単結晶を得るべく試行を継続中である。
|