研究概要 |
分画ヘパリンのラット腹腔マクロファージへの表面結合は顕著な飽和性を示した.さらに,分画ヘパリンの表面結合及び内在化共に,デキストラン硫酸をはじめとするスカベンジャー受容体の基質の他,ヘパラン硫酸等のヘパリン類似物質やローズベンガル等の有機アニオン性低分子薬物によっても阻害された.これらの結果は,肝実質細胞やクッパ-細胞の場合と同様に,マクロファージによる分画ヘパリンの取り込みにもスカベンジャー受容体が関与することを示唆するものである.また,これらの細胞種に共通して,スカベンジャー受容体の基質になり易いと一般的に考えられているアニオン性高分子薬物だけでなく,アニオン性の低分子薬物によっても分画ヘパリン取り込みが抑制されたことも興味深い.ターゲッティング阻害要因としてのスカベンジャー受容体機能を制御するための薬物分子設計への応用が期待される.一方,先行して研究の進んでいるクッパー細胞におけるスカベンジャー受容体介在性の分画ヘパリン取り込みについてさらに詳細に検討した結果,マレイル化BSAに感受性の受容体と非感受性の受容体の2種類の受容体が存在することが明らかとなった.また,後者に比べて,前者が高親和性で低容量の結合特性及び高い内在化効率を示すことが明らかとなった.さらにきめ細かなスカベンジャー受容体機能の制御のためには,受容体の多様性と組織及び細胞分布についての検討が欠かせないと考えられる.
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