研究概要 |
ラットのクッパー細胞での分画ヘパリン取込には,マレイル化BSA感受性および非感受性の2種類のスカベンジャー受容体が関与することが明らかとなった.肝実質細胞における分画ヘパリン取込についても,同様にマレイル化BSA感受性および非感受性の2種類の受容体が関与することが明らかとなったが,興味深いことにアセチル化LDLによる阻害を受けなかった.クッパー細胞での分画ヘパリン取込に関わるスカベンジャー受容体をはじめ,これまでに知られているスカベンジャー受容体は一般にアセチル化LDLによって阻害されることから,肝実質細胞での分画ヘパリン取込に関わる受容体は,アニオン性高分子の取込に関わるという点ではスカベンジャー様の性質を有するが,既知のスカベンジャー受容体のいずれにも該当しないと考えられる.一方,腹腔マクロファージおよび脳毛細血管内皮細胞ではクッパー細胞の受容体と同様の基質特異性を有する受容体が分画ヘパリンの取込に関与していることも明らかとなったが,きめ細かなスカベンジャー受容体機能の制御のためには,受容体の多様性と組織及び細胞分布についてのさらに詳細な情報がが欠かせないと考えられる. スカベンジャー受容体の機能解析にはクローン化した受容体の利用が有効であろうと考え,ヒト,ラビット,マウスにおいてクローン化されている受容体情報を基に,ラットのクッパー細胞に存在する受容体のクローニングにも着手した.また一方で,in vivoのラット肝において,in vitro細胞系での知見に対応するマレイル化BSAによる分画ヘパリン取込の阻害が起こることが確認された.in vitroを中心としたスカベンジャー受容体機能の解析と併せて,定量的なin vitro対in vivo相関解析が,アニオン性高分子量薬物のターゲッティング設計のための今後の研究展開において重要な役割を果たすと考えられる.
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