研究概要 |
平成12年度は前年度に得られたトレチノイントコフェリル(トコレチナート)の安定性に関する基礎データに基づいて,製剤設計により油状あるいは粘稠性の薬物の粉末化と安定化を検討した. すなわち,この目的のために噴霧乾燥造粒法により種々の高分子化合物を用いて医薬品原体をマイクロカプセル化した。これらについて安定性を評価し,得られたデータを原薬のデータと比較した。また,光および酸化安定性を改善する目的で,種々の添加剤(紫外線吸収剤,着色剤,抗酸化剤など)を同時にマイクロカプセル化し,それらの安定性試験を実施し,添加剤の効果を比較評価した。さらに,軟膏剤中での安定性評価も行った。 この結果,以下の新規の知見と成果を得た。 1.食品添加物として用いられているクルクミンによってマイクロカプセル及び軟膏中のトレチノイントコフェリルの光分解を著しく抑制することができた。この効果は酸化チタンを併用することによって更に増大させることができた。 2.光安定化効果は,トレチノイントコフェリルの光分解に関与する波長範囲における添加剤の平均透過率によって,適切に評価できることが判明した。 3.クルクミンは酸化に対しても他の抗酸化剤により顕著な安定化効果を示し,マイクロカプセル及び軟膏中のトレチノイントコフェリルの安定性を著しく改善した。また,クルクミンとアスコルビン酸誘導体を併用することにより抗酸化作用は相乗的に増強された。 以上,クルクミンは光安定化及び酸化抑制の両面においてきわめて有用かつ特異な添加剤であることが確認できた。
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