研究概要 |
我々は、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(D-PDMP)を用いた内因性ガングリオシド枯渇実験により、大脳皮質ニューロンの機能シナプス形成にガングリオシドGQ1bが関与していることを見いだしている。またD-PDMPはNGFによるPC12細胞の突起伸展およびTrk受容体自己りん酸化とそのシグナル伝達系が抑制すること。さらにGM1添加による阻害の回復とTrk/GM1会合体の形成促進を報告し、D-PDMPを用いて神経系におけるガングリオシドの分子種特異的な機能を見い出している。さらに、D-PDMPのアナログを設計/合成した中から、D-PDMPより強力なグルコシルセラミド生合成酵素阻害活性(IC50 : 0.3μM)示し、且つ細胞毒性を示さないPBPPを見い出した。現在、種々のGSL生合成酵素遺伝子とPBPPを有効に活用することによってスフインゴ糖脂質の機能解析を行っている。一方我々は、D-PDMPの光学異性体であるL-PDMPは、逆にガングリオシドの生合成を促進するという興味ある現象を見いだしている。L-PDMPは初代培養神経細胞において、種々のガングリオシド合成酵素活性(GM3,GD3およびGQ1b合成酵素活性)を持続的に活性化すると共に、神経突起伸展作用やシナプス機能亢進作用を発揮した。Cell lyzateやGolgi画分を用いたin vitroassayでは、L-PDMPのガングリオシド生合成酵素活性の活性化は全く認められない。そこでL-PDMPのガングリオシド生合成酵素活性化機序の解明を目的として、A)抗L-PDMP抗体を作成し、L-PDMPの細胞内局在の検討。B)L-PDMP結合タンパクの検索(単離精製,同定、抗体作成、およびクローニング)を進めている。
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