研究概要 |
PCNAは真核細胞のDNA複製に関与するDNAポリメラーゼδ(polδ)のprocessive DNA合成に必須の補助因子であり,複製因子C(RFC)のDNA依存性ATPase活性を促進することが知られている.また,紫外線照射により損傷を受けたプラスミドを鋳型とした無細胞ヌクレオチド除去修復系による実験から,ヌクレオチド除去修復因子の1つとしても示唆されている.さらに,サイクリン依存性キナーゼの阻害因子であるp21やGADD45,DNA複製および修復の両方に関与するFEN-1等に結合することが報告される等,PCNAはDNA上で起こる各種反応の制御機構に重要な役割を果たしていると考えられている.本研究の代表者は,PCNAが関与するDNA修復の分子機構の解明を目的として,組換え型ヒトPCNA変換体を用いて,特にFEN-1との相互作用の解析を行っている.以下に,今年度得られた新たな知見等の成果を示す. PCNAとFEN-1直接相互作用を解析するため,部位特異的変異導入法によりエンドヌクレアーゼ活性を除いたFEN-1変換体を調製した.2本鎖から1本鎖が枝分かれしたブランチ構造を持つDNA(5'flapDNA)をテンプレートとして,PCNAとFEN-1直接相互作用をGel Mobility ShiftアッセイおよびDNase Iフットプリンティング実験により解析した.その結果,Gel Mobility Shiftアッセイでは,PCNAの存在によりFEN-1はDNA上に安定に存在できることが分かった.また,DNase Iフットプリンティング実験により,PCNAは5'flap DNAの5'側から相互作用している可能性が示唆された.
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