研究概要 |
液胞型Na+-ATPaseオペロン全体を含んだプラスミドを導入した菌株から精製をスタートすることにより、収量にいい精製法を確立し、一度の酵素精製で30mg以上の精製酵素標品を得ることを可能にした。液胞型ATPaseはEDTAによるMg2+キレートによって膜から離脱する膜表在性ATPase触媒部分V1とNa+輸送に関わる膜内在性V0部分から構成されるが、V1部分がA,B,C,D,E,F,Gの7つのサブユニットから構成されていることを確認した。さらにV0部分はIとKサブユニットから構成されていることも確認した。本酵素のサブユニットの中でプロテオリピドNtpKの膜貫通部分に唯一存在する酸性アミノ酸残基グルタミン酸(Glu139)がNa+結合部位と推定していた。NtpKをコードする遺伝子に対する部位特異的変異導入を行うことによりGlu139はNa+輸送に必須であることを示した。興味深いことは同じく酸性アミノ酸残基であるアスパラギン酸(Asp139)に置換した場合にも、Na+輸送活性が観察されなくなったことである。酸性残基の存在だけでなくその原子間距離も厳密に保持されていることの必要性も明らかにし、本酵素のイオンに対する厳密な特異性を推定した。さらにそのアミノ酸残基には[14C]N,N'-dicyclohexylcarbodiimideが共有結合することを示した。その反応が輸送基質であるNa+により拮抗されることから、Na+の結合部位であることを明らかにした。
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