1.細胞内カルシウム流入ミトコンドリア酵素アコニターゼ活性変化との関係: 顆粒細胞は非脱分極状態でアポトーシスを起こす。L-型カルシウムチャネル(L-VDCC)からのカルシウム(Ca^<2+>)流入をニカルジピンで阻止すると、やはりアポトーシスが誘起された。したがって、非脱分極誘導性のアポトーシスには、少なくとも部分的にCa^<2+>流入の停止が関与していることが明らかとなった。このどちらの場合でも、アコニターゼ活性の減少が認められた。アコニターゼは活性酸素などで失活するので、アポトーシスの過程でミトコンドリア内に活性酸素が発生していることが裏付けられた。また、MTT還元化活性の減少も認められた。しかし、ミトコンドリア活性の阻害だけでは、アポトーシスを完全には引き起こせなかった。再び脱分極を起こして細胞内へCa^<2+>を流入させると、これら活性減少は停止し、細胞死抑制が認められた。また、アコニターゼは、細胞死におけるミトコンドリア活性を示す一つの指標として用いることができる。 2.カルシウム誘導性遺伝子産物による神経細胞死抑制機構: Ca^<2+>流入で分泌性蛋白質をコードする一連の遺伝子群の活性化が起こる。本年度は、PACAP(pituitary adenylate cyclase activating polypeptide)に注目して解析を行った。その結果、PACAP mRNAの新しいスプライスバリアントの存在、PACAP蛋白質の合成誘導、及び、内在的に合成されたPACAPがレセプター特異的に顆粒細胞の細胞死抑制を引き起こすことが明らかとなった。また、この際、アコニターゼ活性減少の抑制や、アポトーシス関連遺伝子c-junのmRNA発現上昇を一過的に抑制すること、及び、それがMAPキナーゼ系を介していることが明らかとなった。このように、Ca^<2+>流入依存的な細胞死抑制に、合成されたPACAPが部分的に関与していることが明らかとなった。
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