研究概要 |
(1)電位依存性カルシウムチャネルについてはこれまでにヒト脳cDNAライブラリにより,α1Bサブユニット全長cDNAクローニングを行った。その際,細胞内II-III loopが大きく欠損している新しいsplicing variantを発見し,RNase protection assayとgenome解析によってそのスプライシング部位を現在,検討している。また,このバリアントのチャネルとしての性質を明らかにするため,アフリカツメガエル卵母細胞およびヒト胎児腎臓(HEK)細胞に外来性に発現させたところ,全長のチャネルに比べてω毒素感受性の低いチャネルを形成することが明らかになった。(2)Trpチャネルについては,現在,ヒトcDNAライブラリからの単離を進めつつ,すでに得たマウスtrp4およびtrp5のチャネルとしての性質について細胞発現系で検討を行い,trp4は細胞内カルシウム貯蔵部位を枯渇させた場合に開くstore-operated channel(SOC)として機能すること,trp5はGq/G11と共役してイノシトールリン脂質代謝を引き起こす受容体の刺激に伴って開口するチャネル(RACC)であることを明らかにした。また,trp4の開口には細胞内カルシウムイオン濃度が数十nM存在することが必要であることを卵母細胞内を潅流するcut-open法を用いて明らかにした。現在,アンチセンスDNAなどを用いて、それら開口機構の詳細について検討を行っている。(3)神経細胞にSOCやRACCが存在するか否かについて,ラット胎児大脳皮質初代培養細胞にカルシウム蛍光指示薬であるFura-2を取り込ませ,種々の刺激に伴う細胞内カルシウム上昇を記録している。これまでのところ,胎児大脳皮質にもSOCやRACCが存在することが示唆されたため,現在,そのチャネルの実体についてRT-PCRなどによる解析を行っている。
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