研究課題/領域番号 |
11672169
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高野 幹久 広島大学, 医学部, 教授 (20211336)
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研究分担者 |
永井 純也 広島大学, 医学部, 助手 (20301301)
村上 照夫 広島大学, 医学部, 助教授 (20136055)
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キーワード | P-糖蛋白質 / 多剤耐性 / ローダミン123 / 内因性物質 / エストロゲン |
研究概要 |
癌化学療法においては、癌細胞の抗がん剤多剤耐性現象が問題となる。P-糖蛋白質は、この現象を担う本体の一つであり、構造的に多様な薬物をATP依存的に細胞外へと排出するポンプ機能を有している。一方、P-糖蛋白質は腎臓、脳毛細血管等の正常組織にも存在し、我々はその機能解析を進めていく過程で体液中にP-糖蛋白質阻害物質の存在を示唆する知見を得た。本年度は、この点についてさらに明確にするとともに、新規多剤耐性克服物質の発見に向けて、内因性P-糖蛋白質阻害物質の探索・同定を試みた。 腎疾患モデルラットを作成し、ローダミン123(Rho123)の動態を指標にin vivoでのP-糖蛋白質機能を解析したところ、腎障害の程度に応じて腎のみならず肝のP-糖蛋白質機能低下が観察された。これは正常時には尿中に排泄されていた内因性P-糖蛋白質阻害物質が腎障害では排泄されず体液中に蓄積し、これが肝のP-糖蛋白質を阻害したためと考えられた。そこでヒト尿を用い、P-糖蛋白質阻害物質の有無についてRho123輸送阻害活性を指標に解析したところ、ヒト尿中にはP-gp阻害物質が存在することが明らかとなった。尿抽出物の阻害活性には、個体間変動、個体内変動が観察されたが、特に出産前後のヒト尿抽出物が強いP-gp阻害活性を示すことを認めた。出産前後にはエストロゲン等の尿中排泄が著しく増大する。そこで各種エストロゲンの影響について解析したところ、17β-エストラジオール、エストリオール、エストロン、エキリンは何れも同等のP-糖蛋白質阻害活性を有することを認めた。またGC-MSで解析したところ、ヒト尿中にエキリンの存在を確認することができた。従って、これらホルモンは尿中のP-糖蛋白質阻害物質の一種と考えられた。
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