研究概要 |
本研究では,MEFの過剰発現した上皮細胞では,漿液細胞様の上皮細胞へと分化が誘導されるのではないかという仮設を立て,それを立証するために,MEFを上皮細胞に安定的に高発現させた細胞株を作成した.MEF高発現株においては,漿液細胞様の形態変化だけでなく,漿液細胞のマーカー遺伝子であるlysozymeの発現が増加していることがわかった.また,この細胞において,炎症時には増加するというGM-CSFの発現は逆に減少することを明らかにした.これらの知見は,上皮細胞が正常化するための細胞内シグナルとしてMEFが重要な役割を果たしている可能性を示唆した. さらに,上皮細胞におけるGM-CSFの発現が気道炎症病態と密接に関係するという報告に基づき.GM-CSFの発現を高めるETS転写因子ファミリーについてスクリーニングを行った.その結果,血球系細胞だけでなく上皮細胞にも発現している転写因子ETS2がGM-CSFの発現を著明に上昇させることを明らかにした. 本研究において,以下の二つの新しい事実を明らかにすることができた。 (1) 新規転写因子MEFはサイトカインGM-CSFを抑制する作用を持つ。 (2) ets-2はGM-CSFと結合し、更にはGM-CSFの転写を強力に活性化する。
|