抗腫瘍多糖であるカルボキシメチルカードラン(CMCD)の存在下にマウス白血病細胞P388Dlを培養するとき、培養上清中にP388D1から分泌されるウシ動脈血管内皮細胞(BAE)に対する増殖抑制因子(EGSF)を硫安分画、Hydroxyapatite、Q-Sepharose、Sepahcryl S-300及びPBA 30の各種カラムクロマトグラフィーとC18カラムを用いたHPCLを2回繰り返すことにより精製した。得られたEGSFをSDS-PAGEにて分析した結果、銀染色により約60kDa付近に均一のタンパク質バンドが検出された。しかし、精製EGSFのBAEに対する増殖抑制活性は失活していた。また、N末端アミノ酸配列分析を行ったが、配列は明らかにはできなかった。これは恐らくN末端アミノ酸がブロックされているためと考えられたので、精製EGSFをLys-Cによる蛋白質分解酵素処理し、得られたペプチド断片のHPLCによる分離を検討中である。一方、CMCD刺激によりP388D1中でどの様なmRNAの転写が促進されるかをsuppression subtractive hybridization(SSH)法により検討した。現在、subtraction cDNA libralyを解析中であるが、mitogen-activated protein kinase kinase 7(MKK7)、STAT6、pre-B-cell colony enhancing factor、nucleoporin、ATPase-like vacuolar proton channel等を含む15種の遺伝子を同定した。CMCDによるP388D1の活性化機構におけるこれらの遺伝子の役割として、例えばMKK7では、CMCD刺激によりP388D1から分泌されるIL-1やTNF-αの細胞内シグナル伝達に関与することが推察された。また、nucleoporinについては、CMCD刺激によりP388D1中の遺伝子発現機構が促進され、その結果、核-細胞質間輸送の活発化が推測された。
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