山豆根のメタノール抽出液中に白血病細胞に対する強力なアポトーシス誘導活性を検出したので、活性成分をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、活性体の化学構造をNMR、質量分析、元素分析からソフォラノンと決定した。ソフォラノンを用い、種々の癌細胞株に対する増殖抑制活性を測定した結果、白血病細胞のみならず種々の固形癌細胞に対しても20μM以下の濃度で癌細胞の増殖を抑制した。固形癌細胞の中では、特に胃癌MKN7およびAZ-521細胞に強い細胞増殖抑制作用を示し、IC50値はそれぞれ1.2±0.3μM6.8±2.7μMであった。またヘキスト染色法により調べた核の断片化能は、他のフラボノイド化合物であるダイゼイン、ゲニスタイン、ケルセチンよりも顕著に強かった。アポトーシス誘導機構を、白血病U937細胞を用いて解析した結果、MAPキナーゼファミリーのERKとp38活性を阻害し、JNKをわずかに活性化した。MAPキナーゼファミリーの阻害剤はアポトーシス誘導活性に影響を与えなかったので、MAPキナーゼファミリーの関与は低いと示唆された。ソフォラノン処理の初期に活性酸素種の発生、ミトコンドリアのPermeability transition pore(PTP)の開放とチトクロームcの放出、およびカスパーゼ3の活性化が認められた。以上の結果からソフォラノンは、活性酸素種を発生させミトコンドリアに傷害を与える経路と、ミトコンドリアを直接標的としてPTPを開放させる経路を有効に使いアポトーシスを誘導させることがわかった。
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