カンナビノイドCB2受容体を発現しているHL-60細胞を用い、まず、細胞内カルシウムイオン濃度に及ぼす影響を指標にして、各種の合成カンナビノイド、モノアシルグリセロール、N-アシルエタノールアミンの構造活性相関を詳しく調べた。その結果、2-アラキドノイルグリセロールの活性が調べた中では最も強いものであることが明らかとなった。カンナビノイドCB1受容体だけでなく、カンナビノイドCB2受容体の場合も、真の内在性リガンドも、アナンダミドなどではなく2-アラキドノイルグリセロールである可能性が高い。また、この細胞において、2-アラキドノイルグリセロールがMAPキナーゼの速やかな活性化を引き起こすことも明らかとなった。これらの結果は、2-アラキドノイルグリセロールが炎症・免疫系において何らかの重要な役割を演じているものである可能性を強く示唆するものである。次に、神経系における2-アラキドノイルグリセロールの産生を調べた。その結果、脳ホモジネートをカルシウムイオンの存在下インキュベートしたり、シナプトゾームを脱分極させたりすると、2-アラキドノイルグリセロールがイノシトールリン脂質などから速やかに生成することが確認された。2-アラキドノイルグリセロールの生成は、イノシトールリン脂質代謝回転と密接にリンクしたものである可能性が考えられる。また、in vivoにおける2-アラキドノイルグリセロールの産生を調べた結果、ラットに中枢神経興奮薬であるピクロトキシニン等を投与すると脳内の2-アラキドノイルグリセロールレベルが著しく高まることも見い出した。刺激に応じてイノシトールリン脂質等から生成した2-アラキドノイルグリセロールには、一旦起こった神経の興奮を抑制するという重要な役割がある可能性がある。
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