モルモット血漿PAFAHのcDNAのアミノ酸配列上、77、200、324の位置に3カ所のアスパラギン結合糖鎖の結合可能配列(N-X-S/T)を有している。そこで、アスパラギン残基のみがグルタミン残基に置換されたミュータントを産生するための組み換えDNAをKunkelの方法に従い作製した。モルモット血漿PAFAHの一本鎖DNAを鋳型に、アスパラギン残基がグルタミン残基に置換されるように合成した異変オリゴヌクレオチドをアンチセンスプライマーとして部位特異的変異の引き起こされた3種のDNAクローン(N77Q、N200Q、N324Q)を得た。それぞれのクローンについて同様にして、更に、変異を引き起こし、2カ所のアスパラギン残基が置換されたミュータント(N77Q/N200Q、N200Q/N324Q)および全てのアスパラギン残基が置換されたミュータント(N77Q/N200Q/N324Q)を得ることができた。それぞれのミュータントのDNA塩基配列を決定した後、発現ベクターに組み込むこんだ。各種ミュータントDNAおよびワイルドタイプDNAをリポフェクション法によってCOS7細胞に感染させ、細胞および培養上清のPAFAH活性を測定した。ワイルドタイプDNAをCOS7細胞に感染させた場合、細胞内および培養上清のPAFAH活性はそれぞれ24、48時間後に最大活性を示しPAFAHの発現が確認できた。そこで、ワイルドタイプおよびミュータントDNAをCOS7細胞に感染させ、48時間経過した後の、培養上清を用いてウェスタンブロッティング解析を行った。ワイルドタイプ蛋白は血漿より精製したネイティブ蛋白と同一分子量を示すのに対し、ミュータント蛋白の分子量は低下していた。従って、モルモット血漿PAFAHはアスパラギン結合型糖鎖を有する糖蛋白質であることが分かった。また、ミュータント蛋白の酵素活性はワイルド蛋白の酵素活性と比べ有意に変動していた。一方、糖鎖合成阻害薬であるツニカマイシンで処理したCOS7細胞にワイルドタイプDNAを感染させた場合、発現蛋白の酵素活性はミュータント蛋白の酵素活性と同レベルであった。以上の結果は、モルモット血漿型PAFAHに結合するアスパラギン結合型糖鎖はPAF分解活性の調節に役割を果たしている事を示している。
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