研究概要 |
生体膜リン脂質の過酸化反応に伴い、n-6系多価不飽和脂肪酸ヒドロペルオキシドの分解産物として生じ1る4-hydroxy-2(E)-nonenal(4-HNE)は、強力な細胞毒性物貿である。また4-HNEと蛋白質との付加体が、動脈硬化病巣、アルツハイマー患者の脳組織あるいは皮膚癌誘導時のUV-B照射部位等より検出されることから、4-HNEとこれら疾病との因果関係が注目されている。 一方、生体内における4-HNEの主要解毒経路はglutathione(GSH)S-transferase(GST)A4-4によるGSH抱合経路であることから、本酵素の役割は極めて重要であると考えられている。皮膚へのUV-Bの照射は照射部位での4-HNEの生成を誘導するが、その不活性化機構は未だ不明である。 本年度は、皮膚での4-HNEの解毒機構を解明する一環としてUV-B照射皮膚におけるGST分子種の変動について検討し、下記の1)-3)を初めて明らかにすることが出来た。 1)ヒト、ラットおよびマウス肝における4-HNEの主要解毒代謝酵素であるrGSTA4-4は、ラット皮膚中には存在しない。2)ラット皮膚に対してUV-Bを照射すると、皮膚中に顕著なrGSTA4-4の発現誘導が認められ、その発現部位が表皮および真皮中の皮脂腺に特異的である。3)ラット皮膚の常在性GST分子種のうち、Mu(rGSTM1-1,M1-2,M2-2)ならびにAlphaクラス(rGSTA3-3)のGST分子種は、UV-Bの照射に伴い酵素タンパク貿の顕著な発現誘導が認められたのに対し、rGSTP1-1では顕著な発現低下が認められた。
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