研究概要 |
4-Hydroxy-2(E)-nonenal(4-HNE)は、生体膜リン脂質の過酸化反応に伴い、アラキドン酸やリノール酸のn-6系多価不飽和脂肪酸のヒドロペルオキシドからラセミ体として生成することが知られている。また、この4-HNEラセミ体のラット肝臓での主要解毒経路は、glutathione(GSH)S-transferase(GST)A4-4によるGSH抱合であることから、本酵素の役割は極めて重要であると考えられている。 平成11年度では、ラット皮膚へのUV-B照射が、皮膚中のrGSTA4-4の顕著な発現誘導を惹起し、更にUV-B照射時に皮膚中で生成される4-HNEラセミ体は、この時誘導されるrGSTA4-4で主に解毒抱合されることを初めて明らにした。 本年度は、UV-B照射時に皮膚中で生成される各種の過酸化物ならびに4-HNEラセミ体の構成成分の4(S)-および4(R)-HNEの解毒代謝と4-HNEの両エナンチオマーの毒性発現の立体選択性について、当初の予定通り実施した。その結果、下記の1)-4)を初めて明らかにすることができた。 1)ラット皮膚ならびに肝臓の主要GST分子種の脂肪酸ヒドロペルオキシドに対するGSHPx活性は、Thetaクラス(rGSTT2-2)が最大で、ついでAlphaクラス(rGSTA1-1(2),rGSTA1-3,rGSTA3-3,rGSTA4-4)そしてMuクラス(rGSTM1-1,M2-1,M2-2)の順に低下した。2)コレステロール7-ヒドロペルオキシドに対するGSHPx活性は、ラット皮膚中には存在しないrGSTA1-1(2)およびrGSTA1-3のみが示し、その他の6種のGST分子種は同基質に対する還元活性を示さなかった。3)4-HNEエナンチオマーのrGSTA4-4によるGSH抱合反応は、4(S)-HNE>>4(R)-HNEの立体選択性を示した。4)4-HNEエナンチオマーは、解糖系酵素のglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenaseおよびphosphofructokinaseの酵素活性を立体選択的(4(S)-HNE>4(R)-HNE)に不可逆阻害した。
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