本年度は、生体内における4-HNEエナンチオマーの解毒機構の解明の一環として、生体内に種々存在するGSTアイソフォームによる4-HNE-GSH抱合反応の立体選択性を明らかにすることを第一の目的とした。また、この4-HNEの解毒反応の種間差について検討する目的で、モルモット肝における4-HNE-GSH抱合反応の立体選択性についても併せて検討を加えた。その結果、下記の1)-4)を初めて明らかにすることができた。 1.ラット肝可溶性画分から単離・精製された7種類の主要GST分子種の4-HNE-GSH抱合解毒反応の立体選択性は、全て4(3)>4(R)であったが、腎可溶性画分から単離・精製されたrGSTP1-1に1には立体選択性が認められなかった。中でもrGSTM2-2分子種が最大の立体選択性((S)/(R)=6.3)を示した。 2.モルモット肝可溶性画分における4-HNEエナンチオマーの解毒反応は、速度論的解析(Vimax/Km)から、GSH抱合反応>NAD依存的酸化反応の順に低下し、その立体選択性は、前者で4(S)>4(R)、後者で4(R)>4(S)であった。また、4-HNEエナンチオマーは、モルモット肝ではラットと異なりNADH依存的な還元反応を受けなかった。 3.モルモット肝ミクロソームならびにミトコンドリア画分における4-HNEエナンチオマーの解毒反応は、NAD依存的な酸化反応のみで、その立体選択性は4(R)>4(S)であった。また、両画分における解毒反応の寄与率は、上記GSH抱合解毒反応の約1/20であった。 4.モルモット肝の4-HNE-GSH抱合は、4種類の主要GST分子種(gpGSTA1-1、M1-1、M1-2、およびM1-3)により行われ、その立体選択性はラット分子種と同様、全て4(S)>4(R)であった。また、これら分子種の解毒抱合反応の寄与率は、Vmax/kmならびにそれら分子種の肝中存在量よりgpGSTM1-1が最大で、ついでA1-1>M1-2>M1-3の順であることが併せて明らかとなった。
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