低線量の放射線の全身照射は胸腺などのリンパ組織に選択的にアポトーシスを起こすことが知られている。そこでこのモデルを用いて急激かつ大量のアポトーシスが起こったときの生体内での応答を調べた。B10Thy1.1マウスに4Gyの放射線を照射すると経時的にアポトーシスが起こり、それに伴って好中球数の一過的増加がフローサイトメーターで検出された。好中球の浸潤は組織切片のHE染色によっても確認された。このとき好中球は血管内皮に接着していたり内皮を通過して実質に入り込んでいたりしているように見えた。一方、マクロファージはアポトーシス細胞を取り込んでいるように見えた。放射線誘発アポトーシスはp53に依存しているので、p53-/-マウスを用いて同様の実験を行ったところ、アポトーシスが抑制されそれに伴って好中球の浸潤も抑制されていた。最後に、好中球走化性因子のひとつMIP-2のmRNAをRT-PCRで調べたところ好中球の浸潤がもっとも著しい照射後9時間目に検出された。以上のことから急激かつ大量のアポトーシスが生体内で起こるとそれに伴い一過的に好中球が浸潤することが判明した。アポトーシスがどのようにして好中球の浸潤をもたらすのか。浸潤した好中球はいかなる役割を演じているのかは、残された大きな課題である。
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