我々のこれまでの結果から急激かつ大量のアポトーシス細胞が現われるとマクロファージが取り込んでケモカインが産生され好中球が浸潤してくると予想し、次の結果を得た。 (1)あらかじめチオグリコレート培地を注射したC3H/HeJマウスあるいはC57BL/6マウス腹腔に、アポトーシスCTLL-2細胞(C57BL/6由来)をプロピオジウムイオダイドで標識してから投与し、経時的に腹腔細胞を回収して、フローサイトメーターによって分析した。その結果7時間まで時間依存的に好中球の浸潤がみられ、ピークは5時間目であった。MIP-2の腹腔浸出液中のレベルをELISAで調べたところ、3時間目がピークであった。アポトーシス細胞はほとんどマクロファージに取り込まれており、好中球には取り込まれていなかった。この応答は、アポトーシスを起こしていないCTLL-2細胞を投与しても、程度は低いながらみられた。一方、凍結融解を繰り返すことで得たネクローシス細胞を投与すると、アポトーシス細胞のときと同様の好中球の浸潤がみられた。次に、あらかじめクロドロネートを投与して腹腔マクロファージを減少させたところ、アポトーシス細胞投与に伴う好中球浸潤もMIP-2レベルも抑制された。これらの結果から、アポトーシス細胞をマウス腹腔に投与したときの好中球の浸潤には、マクロファージによるアポトーシス細胞の取り込みとその結果産生されたMIP-2が関係しているものと考えられた。 (2)低線量の放射線の全身照射は胸腺などのリンパ組織に急激かつ大量のアポトーシスを起こすことが知られている。B10Thy1.1マウスに4Gyの放射線を照射すると胸腺細胞に経時的にアポトーシスが起こり、それに伴って胸腺での好中球数の一過的増加がフローサイトメーターで検出された。好中球の浸潤は組織切片のHE染色によっても確認された。p53-/-マウスではアポトーシスも好中球の浸潤も抑制されていた。MIP-2のmRNAは好中球の浸潤がもっとも著しい照射後9時間目に検出された。以上のことから急激かつ大量のアポトーシスが生体内で起こるとそれに伴い一過的に好中球が浸潤することが判明した。
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